法律事務所に行く

私たちはイギリスで数回家を売買していた。名義は二人にしたかったのだが、当時、私にはまだイギリスの永住権がなかったので、夫だけの名義になっていた。家の購入の数年後、私も永住権が取れたので、名義を変更すればよかったのだがしてなかった。「どちらかが亡くなった時は、財産は全てどちらかが受け取る。二人とも亡くなった時は、子供達で均等に分ける」という遺書を作っていたのできっと問題ないはず、夫が亡くなったので、私だけの名義にスムーズになるはずだと思っていた。が、どうやら専門家の助けが必要のようだ。

というのも、「プロベイト」という手続きが必要になるからというのだ。プロベイトというのは、故人の残した財産を他の人が動かす権利とのこと。

夫が亡くなって2ヶ月後、私はソリシター(事務弁護士)の法律事務所を訪れた。

前日は1日家にこもって、たくさんの書類やファイルに目を通した。ソリシターから持ってくるように言われたのは、「住所が確認できるもの」と「パスポートか免許証」の2つのみ。
でも折角の時間を無駄にしたくないと、色々関係しそうなファイルを全て持っていくことにした。

遺書、家を購入時の詳細、ローンの詳細、保険の詳細、給与詳細、年金の詳細、結婚証明書、子供たちの出生証明書、税金の詳細などなど、大きなバッグ2つ分の大量のファイルを持ち込んだ。

付き添ってくれたイギリス人友人の奥さんのお母さまが2年前に亡くなった時に奥さんの弟は、ソリシターにこの手続きに2000ポンドを払ったらしい。私の考えていた相場もこのくらい。

相場を聞くために前もっていくつか電話したソリシターの事務所の中には「セット料金と言うのはなく、個々の場合によって異なるが4000ポンドから8000ポンドくらいと幅がある」との返答をくれたところもあった。
高い。

とりあえず会って話してみないと分からないというので、不安を抱えたまま、別の友人が紹介してくれたソリシターと予約をとったのだ。2000ポンドくらいだったらお願いして、高かったら出直して他をあたることを友人と確認して、いざ事務所へ。

まずは私の夫がイギリスに来た背景やら年代やら、私との出会いの時期やら色々聞かれた。

「プロベイト」が私に必要なのは、家の名義が夫の名前になっているから。
銀行口座は共同名義だったし、遺書もあったのだが、それでも「プロベイト」が必要なのだ。
夫の銀行口座なども、たとえ妻であっても勝手に資産を動かせないのだ。

そして、相続税の問題。325000ポンド以上の資産には40パーセントの税金がかかるとのこと。

そして、イギリス人の友人も初めて知る話が出てきた。
イギリスはちょっと変わった国らしく、イギリス人とかイギリス国籍を持っているとかとは別問題で、17年間連続してイギリスに居住していたかどうか、ということがその相続税の時に関係してくるらしいのだ。

夫はイギリスに住んだのは合計20年だが、そのうち3年半を2回に分けて日本で暮らしているので、非イギリス人扱いになるとのこと。私は勿論非イギリス人。この場合の譲与は、相続税が関係しなくなる。(このあたりは各々のケースによって違うかもしれないのと、数年前の話なので今は違うかもしれないことをご了承ください)
でも、イギリス人扱いの人から、非イギリス人扱いの人への譲与には夫婦であっても税金がかかってくるのだ。

相続税がかかりそうにないということで、うちにとってはグッドニュースなのだが、それにしても複雑だ。
厚生年金の計算もあるし、保険金の計算もある。やっぱり1人ではとても無理そうだ。
家の資産価値も、夫が亡くなった日当時の価値を不動産会社に査定してもらうことになるという。

さて、家の名義の話のときに「ランドレジストリー」のことを聞かれた。イギリスの家にはそれぞれ番号があるのだ。
私は夫がファイルしていた「家の購入ファイル」にあることを知っていたので、差し出すとソリシターにとても驚かれた。
なんと、初回のミーティングでこの番号を出したのは私が初めてだというのだ。
「え?それってなんのことですか?」という奥さん方も多いらしい。

伊達に数回家を売買してないです。夫に頼りきっていたとはいえ、私にもそれなりに知識はあるのです!と少し誇らしくなってしまった。

というわけで、アットホームに割とスムーズに話は進み、1時間でミーティング終了。

気になる料金ですが、ソリシターさんがいっぱい手伝ってくれて、でも、自分でもやる場合1000ポンド弱、彼女に全てお願いする場合1200ポンドから1500ポンドとのこと。

相場よりも、想像よりも安い!
全てお願いすることに。

ほっ。

これでだいぶ肩の荷が下りた。大きな仕事を任せられる、信頼できるプロの方と出会えてほっとした。